0. はじめに
アメリカで働くための最も一般的なビザとして知られているH-1Bビザですが、2019年4月よりその抽選方式が変わるようです。
2017年4月、トランプ大統領はアメリカ人の雇用機会を奪っているひとつの原因とされているH-1Bビザについて、その選考プロセスを見直すための大統領令に署名しました。
それを受けて2019年1月30日、アメリカの国土安全保障省(The Department of Homeland Security)はH-1Bビザの選考プロセスについて新たなルールを発表しました。
今回は、その新ルールの概要を分かる範囲でご案内したいと思います。
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1. 要点1: 抽選方式の変更
まず、ご存知の方も多いと思いますが、H-1Bビザは毎年発給数が決まっており、毎年その定員を大幅に超える申し込みが殺到します。
具体的には8万5千の枠に対して、約20万人の申し込みがあります。
この8万5千の枠は、6万5千の四年制大学卒業レベル向け(以降通常枠と呼ぶ)の枠と、2万の大学院卒業レベル枠に分類されています。
申し込む時に、どちらの枠に申請するのかを選択します。
これまで、つまり2018年までの抽選方式は、「大学院枠への応募した人からまずは2万人を抽出し、その抽出に漏れた人は通常枠のプールに入れられて、再び6万5千人の抽選が実施される」というものでした。
なので、大学院枠に申請した場合は、2回抽選の機会が与えられてお得、と理解できます。
そして、今回の新ルールでは、この抽選の順番が変わります。
つまり、「通常枠と大学院枠をひっくるめて、まずは6万5千人の抽出が行われ、そこで抽選されなかった大学院枠の人たちを集めて、さらに2万人の抽選が実施される」というものです。
移民局によると、「その結果、より多くの大学院枠の申請者が選出される見込み(約16%増)」とのこと。
確かに、実際にシミュレーションしてみると分かるのですが、この順番の方が大学院枠がより多く抽出されそうです。
これまでも大学院枠への申請の方が有利だったわけですが、それがさらに有利になる、と言えます。
逆に言えば、通常枠で申請する人にとっては、選出される確率が少し減ってしまうという、好ましくない変更となります。
2. 要点2: 事前登録制の導入
二つ目の要点として、事前登録制の導入があります。
先にお断りしておくと、この制度は、2019年度の選考では導入されません。なので、あなたが2019年の申請を考えている場合、あまり深く考えなくて大丈夫です。
具体的には、H-1Bの申し込みを移民局に郵送する前に、事前にオンラインで登録する、というものです。
その後、抽選が行われ、当選した人だけが実際に申込書を移民局に郵送することができます。
この新ルールの目的は、申請プロセスの簡素化です。
これまでの流れはというと、申請者(多くの場合は弁護士)がとりあえず申請書類一式を移民局に郵送ます。
移民局ではその申込書類を抽選システムに登録し、その後、抽選が実施されます。
抽選されたら審査継続、されなかったら申請書類が返送される、という流れでした。
事前登録制を導入することで、書類の送付、抽選システムへの登録といった手間が削減できることになります。
まあ、20万もの申請があるので、これは確かに大きな経費削減となりそうです。
1点注意点としては、事前登録できる期間が限られているということです。
ちょっと私の理解が正しいかどうか不安はあるのですが、おおまかに言うと以下のようになります。
・移民局は登録開始日の30日以上前に、その開始日を告知する
・登録期間は少なくとも14日間<である(14日以上になることもある)
なので、最悪の場合、登録できる期間が14日しかないことになります。
まぁ、今までは事実上4月1日から一週間だったので、それに比べればずいぶん寛容とも言えます。
なので、「30日以上前の告知」を見逃さないようにしましょう。
告知は移民局のWebページでされるとのことなので、https://www.uscis.govを定期的にチェックすると良いでしょう。
まぁ、移民弁護士さんなら常にチェックはしていると思いますが、、、
そしてもう一つ。
おそらく、登録期間の最終日、特に締め切り時間の直前は駆け込みのアクセスが集中することが予想されます。
なので、余裕をもって登録することをおススメします。
これは本当に冗談ではなく真剣に受け止めてもらった方が良いです。
以前、オバマケアがスタートする時も、申し込みの締め切り直前にアクセスが殺到して、システムがダウンしてしまったという前例があるためです。
まあ、オバマケアダウン時のアクセス数が実際にどれくらいだったのかは分かりませんが、少なくとも数100万レベルだと思います。
それに比べれば、最大でもせいぜい20万人くらいのアクセスと考えれば、そのような自体は起こりにくいのかもしれませんが、割と人生の進路を左右する大事な申請です。
私なら駆け込みで登録するようなことはしないと思います。
実際には、弁護士さんが登録することになるのかなと思うのですが、弁護士さんにも良くお願いしておくのも良いでしょう。
3. まとめ
2017年、H-1Bビザの改革を求める大統領令が出されてから、その動向について「選考は抽選ではなく給与の高い順に選出される?」といったうわさが流れるようになりました。
そして2018年は件の大統領令が出されてから最初のH-1Bシーズンとなったわけですが、フタを開けてみれば例年通り、抽選が実施されました。
ルールを劇的に変更するのはそんなに簡単なことではないのでしょう。
このような背景を踏まえると、今回の新ルールは、やっぱり劇的な変更にはならなかったなあ、と個人的には思っています。
とはいえ、H-1Bビザは、ITエンジニアがアメリカに進出するにあたって、外すことができない重要な選択肢ですので、その動向には注意を払っておきたいところです。
私もこのブログでできる限り新しい情報をお伝えできればいいなと思います。
2020/1 追記
2020年の事前登録の日程が決まりました(3/1 - 3/20)。